Journal of Applied Glycoscience
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トレハロースによる不飽和脂肪酸のラジカル酸化抑制作用
奥 和之黒瀬 真弓茶圓 博人福田 恵温辻阪 好夫櫻井 実
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2005 年 52 巻 4 号 p. 381-385

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抄録
トレハロースの不飽和脂肪酸ラジカル酸化に対する抑制作用について, 1) 不飽和脂肪酸のAAPHラジカル酸化に及ぼす各種糖質添加の影響および, 2) グルコシルトレハロースを用いたトレハロース作用部位の検討を行い, トレハロースの脂質ラジカル酸化抑制作用を考察した.
1) AAPHラジカル酸化によるリノール酸 (LA), α-リノレン酸 (LNA) からのヒドロペルオキシド (HPOD) 生成はトレハロース添加濃度に応じて減少した. 反応24時間でのLAからのHPOD生成量は, トレハロース終濃度7.3mMでは糖質無添加の82%, 14.6mMでは73%, 29.2mMでは45%であった. 一方, LNAからのHPOD生成量もLAと同様にトレハロース添加ではHPOD生成量が糖無添加の50%, TBARS生成量が58%に減少した. 糖アルコール (ソルビトール, マルチトール) 添加のHPOD生成量も低下したが, その作用はトレハロース添加に比べ弱かった.
2) グルコシルトレハロースを用いた不飽和脂肪酸ラジカル酸化抑制試験の結果, トレハロースの一方のグルコース残基2位水酸基がα-グルコシル化されたコージビオシルグルコシド, 4位水酸基がα-グルコシル化されたマルトシルグルコシドでは, トレハロース添加と同様に脂質ラジカル酸化を抑制したが, 3位または6位水酸基がα-グルコシル化されたニゲロシルグルコシド, イソマルトシルグルコシド添加では, その効果はトレハロース添加に比べ約1/2に減少した. 脂質酸化抑制に作用するトレハロース部位が, トレハロースの3位および6位であることが酸化抑制試験からも実証された.
以上の結果から, トレハロースは不飽和脂肪酸のラジカル酸化反応を抑制することが明らかとなった.
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© 2005 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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