Journal of Applied Glycoscience
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Wxα遺伝子を発現した糯種イネ胚乳澱粉の分子構造
花城 勲若山 拓志長谷川 真理樋口 利幸伊藤 紀美子福山 利範竹田 靖史
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2009 年 56 巻 2 号 p. 65-70

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抄録

粒結合型澱粉合成酵素I(GBSSI)をコードするWxα遺伝子を糯種イネ(ムサシモチ)に導入し,澱粉の構造へ与える影響を調べ,以前の結果(Plant Cell Physiol., 49, 925-933 (2008))と比較した.トランスジェニック系統WAB3-5では,澱粉のアミロース含量(15.2%)とアミロペクチンの超長鎖含量(ELC, 11.6%)が増加していた(Table 1). WAB3-5のアミロースは,重合度分布についてはWxα型の品種とWxb型の日本晴との中間的な特徴を有し(Fig. 2),分岐分子のモル分率(MFB, 0.38)および分岐分子の平均鎖数(NCB, 10.5)で示される分岐の程度は非常に高かった(Table 2).夢十色アミロースの分岐の程度はこれに近かった(MFB, 0.35; NCB, 13.7).アミロペクチンの鎖長分布ではB2 + B3鎖の量がWAB3-5でわずかに増加していた(Table 3).これらの構造変化は以前の結果とよく一致しており,既報で提唱したイネ胚乳でのアミロースとELCの合成におけるGBSSIの役割を支持した.また,WAB3-5,IR36,夢十色のELCを比較したところ,これらの重合度分布は基本的には類似しており(Fig. 4),それぞれのアミロースとは異なっていた.アミロペクチンにβ-アミラーゼを作用させた際のELCの分解率は大きく異なったことから(WAB3-5, 66.3; IR36, 92.0; 夢十色,77.0%),各々異なる分岐構造を持つことが示唆された(Fig. 5).

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© 2009 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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