Journal of Applied Glycoscience
Online ISSN : 1880-7291
Print ISSN : 1344-7882
ISSN-L : 1344-7882
ノート
コンバージミル(エネルギー集中型媒体ミル)によるイナワラ等の糖化効率の評価
竹田 匠二階堂 満戸谷 一英小原 実広中野 友貴内宮 博文
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 56 巻 2 号 p. 71-76

詳細
抄録

近年バイオエタノールの原料として,膨大な量のトウモロコシやサトウキビ等が使用されるようになった.その結果,主要穀物の不足,食品価格の上昇を招いている.そのため,食用部位は食料として利用し,茎葉(イナワラやコーンストーバー,バガス)などをバイオエタノールの原材料として効率良く利用することが望まれている.特に,これらに由来する細胞壁糖鎖を効率良くグルコースへと変換する糖化技術の開発が求められている.そこで,コンバージミル(エネルギー集中型ミル)を用いてイナワラ,サトウダイコンおよびサトウキビの搾りかす等を微粉砕化して,セルラーゼによる加水分解の向上を検討した.その結果,全種類の微粉末においてセルラーゼによる加水分解が促進された.単子葉植物であるイネはヘミセルロースであるキシランが細胞構造の維持に重要な役割を果たしていると考えられている.そこで,キシランに対して特異性の高いβ-Xylanase M6を微粉末に処理し,キシランの加水分解を調べた結果,微粉末におけるキシランの分解が促進された.これは微粉砕化による細胞構造の破壊やキシランの低分子化がキシランの加水分解を促進したと推察された.また,セルロース紙を微粉砕化することによりグルコースやセロオリゴ糖が生成されることより,高度に結晶化しているセルロースが非結晶化および低分子化していることが推察された.イナワラやサトウキビの微粉末を水で懸濁することで得られた水可溶性画分にはグルコースやキシロースを構成糖とする糖鎖が存在し,サトウダイコン微粉末の水可溶性画分からはラムノースやアラビノース,グルコース,ガラクトース,グルクロン酸などの構成糖が検出された.これらの結果より,セルロースやヘミセルロース,ペクチンの低分子化が起こっていることが推察された.このようにコンバージミルを用いた微粉砕化により,細胞構造の破壊とともに細胞壁糖鎖であるセルロースやヘミセルロース,ペクチンの低分子化が生じ,細胞壁分解酵素であるセルラーゼやキシラナーゼによる加水分解が促進されることが明らかとなった.

著者関連情報
© 2009 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
前の記事 次の記事
feedback
Top