澱粉科学
Online ISSN : 1884-488X
Print ISSN : 0021-5406
ISSN-L : 0021-5406
米種子の発芽の際の澱粉の分解機構
桐渕 滋雄中村 道徳
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 21 巻 4 号 p. 299-306

詳細
抄録
 米種子の発芽過程で,胚乳部の澱粉の分解に関係すると考えられる二,三の酵素活性の変動を測定し,さらに,胚乳部や澱粉粒が酵素の作用で変化していく状態を走査型電子顕微鏡で観察し,大麦の発芽時と比較した。 α- アミラーゼ活性は吸水前および4日目までは認められず,4日目以後,急速に上昇し,10日目くらいに最高に達し,それからは緩かに低下しはじめる。β-アミラーゼは吸水前から活性があるが,4目目から活性は上昇しはじめ,10~12日目に最高に達し,以後緩かに低下しはじめる。一方,ホスホリラーゼは発芽の全期間を通して痕跡程度の活性しか認められなかった。 発芽前の胚乳は角柱状の胚乳細胞が配列し,胚乳細胞は多面体の澱粉小粒がぎっしりと詰って複粒構造をしてアミロプラスト膜に包まれた澱粉粒が緻密に並んでいる。 吸水後,胚乳内に澱粉を分解する酵素の活性が上昇しはじめる前に,胚盤近くの部分から澱粉粒の間を埋めている物質が消失して,澱粉粒が浮き出し,分解酵素の作一用を受けやすい状態になる。酵素活性が上昇しはじめると,角柱状の細胞構造は壊れ,アミロプラスト膜も消失して澱粉小粒が裸出するが,粒の表面は浅い丸い穴が少しあいている程度である。しかし,澱粉小粒の表面全体から一様に消化されていると思われるものが観察された。発芽末期でも澱粉小粒は,表面の丸い穴の数は増えるが,粒の中心部まで浸食が進んだものは見当たらず,粒径が小さくなったものが増え,大麦での澱粉分解の形式と異なることがどうかがえた。 これらの事実から米澱粉粒の構造についても若干考察した。 本報告の要旨は昭和48年度日本農芸化学会関東支部大会(新潟)で発表した。
著者関連情報
© 日本応用糖質科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top