澱粉科学
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澱粉の糊化温度に及ぼす塩と糖の影響
高橋 浩司白井 邦郎和田 敬三川村 亮
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1980 年 27 巻 1 号 p. 22-27

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抄録
 無機塩,有機酸塩,糖類の各種濃度溶液中での馬鈴薯澱粉の糊化温度を示差熱分析により分析した.その結果を以下に要約する. 1.ナトリウム塩についてフッ化物は,その溶液濃度の増大に伴い糊化温度を上昇させるが,他のハロゲン化物は糊化温度を低下させ,その影響は元素の周期律表における順序と一致していた.炭酸塩重炭酸塩は糊化温度にほとんど影響を及ぼさないが,硫酸イオン,リン酸塩,チオ硫酸塩は糊化温度を著しく上昇させた.一般にカチオン成分よりアニオン成分の影響が大きい.カチオンでは,2価イオンの方が1価イオンより強い影響を示した.有機酸塩の影響は全体的にみて小さい.糖類は一般に糊化温度を強く上昇させた. 2.これらの物質の糊化温度に及ぼす影響の強さは,本報で定義した臨界濃度指数(糊化温度を変化させるための最低濃度の指数)により定量的に表わせる. 3.この臨界濃度指数は,イオンの離液数や水和数と非常に高い相関性が認められ,また各塩のB係数と密接な関係が認められた.このことから塩溶液中の澱粉の糊化は,溶液中の水の構造変化に大きく左右されるものと考えた. なお本報告の大要は,昭和54年度日本農芸化学会大会で発表した.
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© 日本応用糖質科学会
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