抄録
糸状菌Hypocrea peltataの生産するアミラーゼ成分を各種カラムクロマトグラフィーを組み合せて,ディスク電気泳動で単一バンドを与えるまで精製した. このアミラーゼがグルコアミラーゼ[EC 3.2.1.3]であることを明らかにし,本酵素の示す諸性質を調べた.本酵素の分子量はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で約73,000と推定された.本酵素の至適pHおよび反応最適温度はそれぞれpH 4.5~5.0,600Cであった.本酵素の安定pH領域は4℃ においてpH 4.0~7.0であり,80℃,10分間の加熱処理で完全失活した.1mMのHg2+は本酵素作用を完全に,また1mMのAg+およびFe2+は本酵素作用を一.部阻害した. 本酵素のグリコーゲン,アミロペクチン,アミロース,可溶性澱粉,短鎖アミロース(DP=17.3),マルトース,イソマルトース,パノースに対する作用を検討した.上記の各基質からの反応生成物はいずれもグルコースのみであることが確認された.本酵素を可溶性澱粉に作用させた際の反応生成物のアノマー型はβ型であった. 本酵素をグリコーゲン,アミロペクチン,アミロース,可溶性澱粉,短鎖アミロースおよびマルトースに作用させ,それぞれの基質に対するKm値ならびにVmax値を求めた.