抄録
バチルス・マセランスサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(BME)の環化反応を,各種の界面活性剤を用いて検討した.還元末端を標識したマルトオリゴ糖を用いて環化反応を検討した結果,環化は,α-1,4グルカンの非還元末端から進むことが明らかにされた.また,疎水部分に直鎖炭素鎖をもつ界面活性剤は,酵素のα -サイクロデキストリン(α-CD)生成反応を著しく促進した.一方,直鎖炭素鎖より大きな疎水部分をもつ界面活性剤はβ-CD生成に効果的であった. 脱脂モチトウモロコシ澱粉から,細菌の液化型α-アミラーゼと β-アミラーゼ処理により調製したデキストリンでは,SDS無添加でごく少量のCDしか生成されないが,このデキストリンを用い,α-CD形成用界面活性剤を加えて,主としてα-CDを,またβ-CD形成用界面活性剤を加えて,主としてβ-CDを生成するように酵素作用を変化させることができた. 可溶性澱粉を用いたときのα-CD生成速度は,SDS(ラウリル硫酸ソーダ)添加によって無添加のときより1.6倍速くなった. これらの結果から筆者らは環化反応はα-1,4グルカンの非還元末端から65-ラセンまたは76-ラセンを形成しながら進み,α またはβ-CDを生成し,したがって,BMEの作用パターンの変化は酵素の特異性のみならず,ラセン形成試薬によって基質の構造が変化することによっても起こると推論した.