Journal of Applied Glycoscience
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製パン性とドウの物性に及ぼす分級小麦粉代替の影響
前田 智子森田 尚文
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2000 年 47 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

 通常に製粉された農林61号の小麦粉(N61)に同じ穀粒を外層より搗精分級した分級粉を代替し,最適な製パン法およびドウの物性について検討した.全穀粒重量の70-40%層から得られる分級粉(FractionB)をN61の30あるいは50%代替し,水分の添加量を小麦粉重量の75%あるいは85%として製パンすると,N61単独よりもパンの体積は大きくかつ軟らかくなった.さらに,この代替小麦粉にペントサナーゼ(PEN)およびセルラーゼ(CEL)を添加すると,N61の単独よりも顕著にパンの体積は大きくかつ老化抑制効果が認められた.特に85%の水分を含む50%の代替粉ではPENおよびCELの添加によって,粘弾性(弾性率,粘性係数)はN61単独の場合よりも増加した.生地の最適ドウ形成時間は低下したが,生地の安定性は増加した.DSCの結果,糊化エンタルピーがやや減少し,SEM観察では,ドウ中の澱粉粒子は伸展性のあるグルテン組織に囲まれ,発酵中の膨化も促進されていた.また焼成後のパン中には十分な澱粉の糊化が観察された.分級粉で代替されたN61が良好なドウの物性と製パン性を保つためには,適当な水分量とペントサンおよびセルロースを加水分解するPENあるいはCELの添加が必要であった.

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© 日本応用糖質科学会
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