地下水学会誌
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短報
2011年津波の千葉県旭市沿岸域地下水とその利用への影響
津波7年後までの追跡調査
杉田 文
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2019 年 61 巻 1 号 p. 55-63

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抄録

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に続いて発生した津波による千葉県旭市沿岸部における地下水とその利用への影響について,津波7年後までの調査結果を報告する。津波2か月後に広域で認められた電気伝導度(EC)の高い地下水(最大値16,008μS/cm)は,2018年2月には1000μS/cm以下に低下した。ECの低下曲線から,本地域における地下水の滞留時間は2.4~4.6年と推定された。津波2年後以降,土壌からの成分の溶出が原因と推定される薄黄色を呈する地下水が増加し,2018年においても広く分布している。津波による井戸の構造的被害は少なく,2か月以内には揚水が再開され,1年後までには飲用を再開した井戸が多かった。しかし,2年後以降,着色が認められるようになると飲用を再開した36本の井戸の内,32本の井戸が飲用を再度中止され,現在では着色が大きな利用障害となっている。アンケートの結果,住民の飲用としての地下水利用希望は強く,公的補助による水質検査と地下水に関する情報が最も必要と感じていることがわかった。これまでの調査により,将来の津波による地下水利用への被害軽減のためには,井戸蓋の完全防水化,湛水した海水や海水蒸発残留物の除去,および津波後の井戸の継続揚水などが効果的であることが示唆された。

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© 2019 公益社団法人 日本地下水学会
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