2020 年 25 巻 1 号 p. 106-112
本研究の目的は,要介護高齢者に対する入浴直後のワセリン塗布による保湿効果持続性を明らかにすることである.入院患者51人を対象として,入浴前日,入浴1日目,2日目,3日目の前腕と下腿の角質水分量を,携帯型皮膚水分計を用いて測定した.本機器は25以上が十分な水分量を示す.入浴前日の測定値25以上を非乾燥群,25未満を乾燥群として各群の4日間の推移を分析した.前腕と下腿の非乾燥群は,ワセリン塗布前から十分な水分量を維持していたため保湿効果は不明であった.前腕の乾燥群は,1日目の水分量が有意に増加し,3日目には十分な水分量まで増加していた.下腿の乾燥群は,1日目と2日目の角質水分量が有意に増加したが十分な水分量には届かなかった.以上から,要介護高齢者に対する入浴直後のワセリン塗布は,前腕と下腿の非乾燥群に対しての保湿効果は不明であった.また,前腕の乾燥群に対しては3日間の保湿効果持続性が期待でき,下腿の乾燥群に対しては十分な保湿効果が認められなかった.