研究目的は,急性期病院における認知障害高齢者の転倒に繋がりうる行動とその背景にあるニーズを,転倒発生の多い入院1週間に焦点を当ててせん妄発症の有無により分析し,明らかにすることである.対象者は,急性期病院に入院した認知障害高齢者9人であった.方法は参加観察法である.転倒に繋がりうる行動が観察された際に本人のニーズを聞き取り,ケアによって行動が落ち着いた場合を真のニーズとしてとらえ,行動を意味・内容ごとに分類した.その結果,非せん妄時では,転倒に繋がりうる行動は7項目観察され,その背景にあるニーズは“生理的欲求・習慣”“身体的苦痛・不快”“精神的ストレス”の3カテゴリーであった.行動の背景には本人の明確な意思があり,その意向が尊重されないことによるストレスを抱えていた.せん妄発症時では,転倒に繋がりうる行動5項目と“現状認識困難による不安”“身体的苦痛・不快”の2カテゴリーのニーズが見いだされ,ひとりでいることへの不安や,治療や疾患から生じる複数の苦痛があった.本人の意思を尊重した生活支援や,身体的苦痛・不快や不安への早期介入による転倒予防の可能性が示唆された.