抄録
オーストリアには多様なエスニック集団が居住しており,エスニック文化を資源としたビジネスが
展開されている。たとえばウィーンの代表的なエスニックマーケットであるナッシュマルクトでは,固有の文化をアピールすることにより,利益をあげている。また,自身の文化を示すことは,集団への帰属意識を高める一方で,ホスト社会における理解を深め,共生の可能性を大きくしている。
しかし,難民やロマのように差別の対象とされる集団は,固有の文化をアピールする機会は限られている。彼らが自身のエスニック文化をいかに活用し,アピールすることが差別や不公平の状況から変わることにつながるのか。ロマを対象にして,彼らの社会的統合との関わりからエスニック資源の可能性について検討した。