抄録
本報告は首都圏を対象に「農」資源の観光活用に基づく,新たな農業地域区分を試み,その有用性を検討する。首都圏の市区町村における「農」資源の観光活用率の特化係数を「農」資源の特化係数で除して,「農」資源の観光活用ポテンシャル係数を求めた。その係数が高いことは,保有する「農」資源が十分に観光利用されており,低いことは,「農」資源の観光利用が進んでいないことを示している。この観光活用ポテンシャル係数の等値線図では,高いポテンシャル係数の地域が東京西郊の都市近郊地域から中央線沿線と京浜東北線沿線に広がっていた。その地域を取り囲むようにしてポテンシャル係数の中位地域が,さらにその外側にポテンシャル係数の低位地域が圏構造的に分布していた。このような「農」資源の観光活用ポテンシャルの空間的な分布によって,客観的な地域区分の線引きが可能であり,対象地域を全国に広げることもできるため,新たな農業地域区分として提案できる。