2022 年 15 巻 3 号 p. 295-308
本研究は,竜ヶ崎ニュータウンにおける地域コミュニティの将来的な展望を提示することを目的とし,(1)男女差と地区間の差異および(2)住民自治組織の果たす役割の2点に着目しつつ,居住地域スケールにおける社会関係の構築状況とその過程を検討したものである。その結果,竜ヶ崎ニュータウンでは,高齢期に社会関係の構築を図る男性住民と,社会関係を縮小させる女性住民という男女差がみられた。退職以前の住民の場合,居住地域スケールにおける社会関係の構築過程は,郊外住宅地の開発経緯に基づく先天的な条件に大きく規定されていることが示唆された。ただし,竜ヶ崎ニュータウンでは住民自治組織を契機とする社会関係構築の量に地区間の差異が存在し,これが退職後の男性住民による社会関係の構築に関する地区間の差異にも反映されていた。このように地域コミュニティの課題は住宅地ごとに異なるため,高齢期に住み続けられる環境の実現にはさらなる事例研究が求められる。