地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
都市の空き家問題と家・家族・福祉の相互関係の変化
龍ケ崎市の事例
久保 倫子清水 友輝Yaqian MAO岩井 優祈
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 15 巻 3 号 p. 321-331

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抄録
急激に高齢化が進行する日本においては,中小規模の地方都市や外部郊外での空き家増加,フードデザート問題,公共交通網の縮小や撤退,さらに徒歩圏内での福祉を含めた生活必需施設へのアクセス低下などの問題が生じている。このような地域では,高齢者の生活の質も低下しつつある。都市の空き家問題に代表される,高齢化と関連する諸問題は,政策や制度,慣習,個人を取り巻く環境や能力など,複雑な要因が長期的に絡みあい表出したものである。よって,相続時の個人の意思決定などの表層的な要因だけでは,都市の空き家問題を理解することは不可能である。日本においては,家事や育児,住宅の継承や維持管理などの福祉は,家族内で賄われる傾向があり,この領域にあるサービスの外部化は十分になされているとは言い難い。子世代は,家庭内の福祉を賄う代わりに,住宅をはじめとする資産を親世代から継承することが通例であり,それが意味を持った時代が長かったといえる。しかし,近年の社会変化,とりわけ未婚化や夫婦共働きの増加,都心部における住宅供給の増加などにより,子世代がこの役割を担うことは困難となり,「負動産」と揶揄されるように世代間で継承されてきた資産の価値も変わってきた。 本研究では,龍ケ崎市のニュータウン地区,中心商業地区,農村地区において,3世代にわたる家・家族・福祉の実態に関する聞き取り調査を実施し,約100世帯の回答を得た。この分析を通じて,家・家族・福祉の関係性の経年的な変化を明らかにする。
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© 2022 地理空間学会
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