地理空間
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埼玉県美里町における不耕作農地対策と観光農業の発展
深瀬 浩三
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2011 年 4 巻 1 号 p. 43-55

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抄録

 本論文は,不耕作農地の増加を背景として,農業・農村を活性化するために導入された観光農業について,埼玉県美里町を事例に考察した。美里町では,1999 年度から2003 年度にかけて町や県の補助事業を積極的に活用して,荒廃桑園などの不耕作農地を中心に,ブルーベリーやプルーン,ウメ,アンズ約70ha が植栽された。果実は主に観光農園や美里町農産物直売所により直接販売されるほか,農協による市場出荷や業者への契約販売も行われている。ブルーベリーを中心に果実の販売は拡大している。観光農園の多くは,経営主の定年退職をきっかけに開設され,60 歳以上の2 ~ 3 人の家族労働で経営されている。美里町は東京大都市圏近郊に位置し,関越自動車道の花園インターチェンジと本庄児玉インターチェンジに挟まれている直接的な好条件に恵まれるため,埼玉県内の市街地から家族連れが訪れたり,東京を起点とした観光バスツアーの日帰り客が増加している。このように,美里町の観光農業は行政主導によって基盤が整備され,ブルーベリー観光農園を中心に発展してきた。常連客や観光業者の存在によって支えられている点に特徴がある。今後は再び不耕作農地が発生しないシステムを形成することが課題である。

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© 2011 地理空間学会
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