抄録
現代日本の農村空間は,生産空間という性格が相対的に低下し,消費空間という性格が強くなっている。これを農村空間の商品化として捉えることができる。農村空間の商品化には,(1)既存の農産物の供給,(2)新しい農産物の売買,(3)都市住民の農村居住,(4)レクリエーションや観光,(5)景観・環境保全や社会・文化の理解による生活の質の向上,といった5 つの形態があるが,この報告は第5 番目の形態とみなすことができるエコミュージアム活動によって,いかに地域振興が行われているかを検討する。研究対象地域として,日本のエコミュージアム活動を主導してきた山形県朝日町をとりあげ,特に地域住民の日常的な活動に着目した。地域住民は必ずしもエコミュージアムを強く意識しているわけではないが,自らの自然環境や文化遺産などの地域資源を活用して,生活の質を高め,地域社会を維持発展させるという活動を定着させている。