抄録
本研究は,カナダのブリティッシュコロンビア州におけるファーム・ダイレクト・マーケティングの特徴を,農場の分布,商品の類型,生産と販売方法などに注目して説明した。農産物を直売するファーム・ダイレクト・マーケティングは,バンクーバーの外縁部から郊外にかけて点在する。そこはフレーザー川下流平野に広がる園芸農業地帯であり,1990年代からファーム・ダイレクト・マーケティングが増加した。商品は多様であるが,基本的には,果実,野菜・花卉,畜産,ファームストアの4類型と,それらの組み合わせに分類できる。農場の面積は小規模であり,農場主は2代目の多才な経営者が多い。彼らは,新鮮・地元・安全を宣伝し,つながりのあるリピーターへフェイスブックなどで情報を発信している。農場の経営は,都市的な土地利用の圧力を受けているが,地元産の食にこだわる都市住民の需要や,農村の良いイメージに支えられて,発展する可能性がある。