地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
9 巻 , 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 高橋 昂輝
    2016 年 9 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     近年,北米では業務改善自治地区(BID)が普及している。本稿では,トロントのエスニックネイバーフッドを中心にBIDの動向を議論し,北米都市を分析するための空間的枠組みとして,BIDの意義を明らかにする。BIDは特定の地区内の土地所有者が自主的に課税することにより資金を確保し,域内の経済的活性化のために活動する地域自治制度である。1970年にトロントで誕生後,1980年代までにカナダで1990年代以降アメリカで導入が進展した。1980年代,トロントではエスニック集団の名称を冠するBIDの設立が相次いだ。こうしたエスニックBIDの出現は,1971年の二言語多文化主義政策への転換によるエスニックマイノリティへのまなざしの変化を反映する。エスニックBIDでは,地元経営者・土地所有者から成るBID役員会におけるリーダーシップと役員構成が,エスニックブランディングの発展を規定する。BIDはローカルアクターに着目し,北米の都市空間を精細に読み解くための鍵概念である。
  • 淡野 寧彦
    2016 年 9 巻 1 号 p. 21-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿は,近年,急速に生産が拡大した飼料用米に注目し,飼料用米を活用した養豚業を含む耕畜連携が進展した要因と地域農業への影響について,首都圏の生活協同組合が中心となって取り組まれる「日本のこめ豚」事業を事例に考察した。飼料用米を生産する岩手県軽米町においては,長らく続く主食用米の生産調整に苦心し,かつ地域の主要農産物であるたばこ生産の減衰がみられるなかで,経営規模の異なる様々な農家にとって着手しやすい飼料用米生産が有効な手段の一つとなり,その作付が増加した。さらに経営規模の大きい秋田県鹿角市の農事組合法人においても,飼料用米生産は効率的な転作作物品目として歓迎された。そして,これらによって生産された飼料用米は,環境負荷の低減や商品の流通・販売情報の入手とその活用に積極的な秋田県小坂町の養豚業者によって活用され,その豚肉を販売する生活協同組合も,詳細な情報提供や産地見学などによって組合員である消費者からの評価を高め,販売が急拡大した。本事業の進展は,耕作放棄地の発生防止や飼料原料の自給率向上などの課題への対策を,消費者に「見える」さらには「見せる」ことによって具体化し,生産者らの取り組みへの共感をもたらした。飼料用米生産の継続は補助金交付を前提としたものであることは否めないが,複数の地域や異業種間,また消費者も含めた連携や連帯感の創出が,地域農業の新たな展開や存続に好影響をもたらすものと考えられる。
  • 大塚 直樹, 丸山 宗志
    2016 年 9 巻 1 号 p. 45-62
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     本論文では,ホーチミン市におけるバックパッカーエリアの空間的特徴として以下の3点を指摘した。第1に,かつてのサイゴン駅の沿線地域に位置するバックパッカーエリアには,部分的であれ鉄道駅に関連した業種が立地していた点を旧版地図の分析から示した。第2に,バックパッカーエリアの中核をなす4本の街路は,業種別構成を確認すると,それぞれ独自のパターンをなしている点を示した。第3 に,街路別の特徴は,バックパッカーエリアの拡張過程を反映していると推察される点を指摘した。以上から,ホーチミン市におけるバックパッカーエリアは,オルタナティブツーリズムが展開される均質的な空間ではなく,街路ごとに特徴をもった都市空間であることを明らかにした。
  • 田林 明, 仁平 尊明, 菊地 俊夫, 兼子 純, ワルデチュック トム
    2016 年 9 巻 1 号 p. 63-86
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
    この報告では,魅力的な自然景観が展開し,多様な農業が営まれ,都市住民のレクリエーションや農村居住をはじめとして様々な形の農村空間の商品化が進んでいるカナダのブリティッシュコロンビア州のうち,人口集中地域に近接しているローワーメインランド地域を取り上げ,農村空間の商品化がどのような特徴をもっているかを明らかにする。この地域では,ホビー農業や農産物直売所,農場ツアー,摘み取り,ワインツーリズム,乗馬,農村居住など多様な商品化がみられた。特に様々な農村観光資源を結びつけ,地図化し,それぞれの訪問者に自分でそれらを訪れさせようとするサークル・ファーム・ツアーの試みは独特なものであった。その特徴は,自然,景観,歴史,家族志向,手作り商品のほかに,家族経営,地元,新鮮・高品質,エコロジー,地域社会との連携といったキーワードによって示されている。
  • 仁平 尊明, 田林 明, 菊地 俊夫, 兼子 純, ワルデチュック トム
    2016 年 9 巻 1 号 p. 87-113
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,カナダのブリティッシュコロンビア州におけるファーム・ダイレクト・マーケティングの特徴を,農場の分布,商品の類型,生産と販売方法などに注目して説明した。農産物を直売するファーム・ダイレクト・マーケティングは,バンクーバーの外縁部から郊外にかけて点在する。そこはフレーザー川下流平野に広がる園芸農業地帯であり,1990年代からファーム・ダイレクト・マーケティングが増加した。商品は多様であるが,基本的には,果実,野菜・花卉,畜産,ファームストアの4類型と,それらの組み合わせに分類できる。農場の面積は小規模であり,農場主は2代目の多才な経営者が多い。彼らは,新鮮・地元・安全を宣伝し,つながりのあるリピーターへフェイスブックなどで情報を発信している。農場の経営は,都市的な土地利用の圧力を受けているが,地元産の食にこだわる都市住民の需要や,農村の良いイメージに支えられて,発展する可能性がある。
  • 菊地 俊夫, 兼子 純, 田林 明, 仁平 尊明, ワルデチュック トム
    2016 年 9 巻 1 号 p. 115-129
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究はカナダ・ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー島のカウチンバレー地域におけるワイナリーの発展とそれにともなう農村空間の商品化の地域的な特徴を明らかにした。カウチンバレーの16のワイナリーは大規模ワイナリーと中規模ワイナリー,および小規模ワイナリーに類型化できる。この地域では,小規模ワイナリーから大規模ワイナリーまで相互に結びつくことにより,ワイン産業のブランド力が高まり,ワイン産地の競争力が強化された。さらに,ワイナリーと地元農産物の生産農場とが結びつくことにより,農村空間の商品化も発展するようになった。いずれにせよ,カウチンバレーのワイナリーは新規就農者の農場購入とワイン生産や農村居住への憧れからはじまり,経営者のワイン生産のこだわりや情熱,および農場間のネットワークの構築によって農村空間の商品化の中核となってきた。
  • 矢ケ﨑 典隆
    2016 年 9 巻 1 号 p. 131-145
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     カナダ・ブリティッシュコロンビア州の内陸に位置するオカナガンバレーは,この国有数のワイン生産地域として知られ,20世紀末から急速な発展を経験した。本稿は,ワインツーリズムに着目することにより,この発展過程を明らかにすることを目的とした。そのために,オカナガンバレーワイン生産地域の中核をなすケローナ地域を対象として,32軒のワイナリーの特徴,ワインツーリズム,土地利用の変化に着目した。多様な出身国と職歴を有する人々がワイン産業に参入し,さまざまな取り組みが行われる。行政による観光振興は,観光案内所,各種のパンフレット,ワイン博物館などを通して,ワインツーリズムの基盤をなしている。ワイナリー建設と新しいワイン事業の取り組みは継続しており,この地域の人口増加とオカナガンワインの高い評価を考えると,ワイン産業とワインツーリズムは今後も継続した発展が予測される。
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