2009 年 12 巻 p. 215-236
本研究は,編入学制度が学生に対していかなるインパクトを有しているかを示すことを課題とし,全国の23学部に在籍する239名の編入学者が対象の振り返り調査データを用いて,短大,高専,専門学校からの編入学者ならびに転学者の満足度や学習意欲,学業の自己評価を編入学前後で比較検討した.また,変化を引き起こす要因について自由記述を通して考察した.
その結果,短期高等教育機関からの編入学者では満足度や意欲,学業の自己評価の低下を経験する一方で,転学者では満足度や意欲は改善するが,学業の自己評価は改善しないことが明らかになった.移動を前提としていない日本の高等教育システムの構造ゆえに直面する,対人関係の課題,ならびに編入学直後に職業社会への移行を考え出さざるを得ない状況について論じた.