本稿では,大学の教科書を分析対象にして,大学教育の標準性の実態について基礎的・試験的な検討を行った.これまでの大学の教科書に関する研究の蓄積について整理した上で,索引を用いて,大学の教科書における標準性の共時的差異と通時的変化を明らかにした.標準性を測る指標としては,浦田(1987)で作成された合意度という指標を用いた.この分析に加えて,記載の頻度の高い単語に注目し,教科書の内容の変化についての検討も行った.結果としては,調査した三つの専門分野全てで標準化が進んでいること,文系分野よりも理系分野で標準性が高いこと,文系分野では会計学が教育学よりも標準性が高いこと,また,記載頻度の高い単語は,物理学では変化の程度が低く,教育学では変化の程度が高いことなどを明らかにした.