2009 年 12 巻 p. 29-48
本稿の目的は,1990年代以降の高等教育システム変動の中で,我が国の大学がどのように変化し,何がもたらされているかを明らかにすることである.設置認可行政の変化による大学教育供給構造の変化,大学院拡大による教育条件と学生の変化,国立大学の法人化による資金配分の変化を取り上げ,それぞれが高校生の進学行動,学生と教員の関係,国立大学の序列構造および教員への資金配分にどのような影響を及ぼしたかを分析した.
分析結果は次の通りである.大学教育の供給構造は大きく変化し,1990年までに一旦縮小した地域間格差は,その後拡大を続けている.大学院拡大は実際の授業場面での教員当り学生数増加をもたらしており,修士課程学生の質的変化も進んでいる.財政規模からみた国立大学の序列構造は大きくは変化していないが,研究費配分にみられる教員間格差は拡大している.すなわち,大学の変容に翻弄されているのは,大学教育を受ける機会が相対的に乏しい地方の高校生と,変質した学生と不安定な研究費に直面している大学教員である.