2009 年 12 巻 p. 49-70
政府の財政システムにつながる高等教育機関には,財政の三機能を果たすことが求められている.よって,財政学的な見地から公的資金投入の正当性を確認することも必要となる.高等教育を取り巻く資金フローは,この20年の間に公的経常財源が伸び悩む半面,競争的・選択的な方法で外部から流入する研究資金は急激に拡大している.また,公的金融(財政投融資)を積極的に活用している点も日本の特徴であり,財投改革の結果として,高等教育機関も間接的ながら金融・資本市場に資金を依存する形態に変わった.さらに,財投を使用した貸与奨学金の所得再分配効果は明らかであり,このような形で政策的優先度を財政学的視点から検証していく研究が今後も必要とされる.