高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
特集 変容する大学像
臨時教育審議会以降の大学教員の構造と機能の変容
教育・研究活動を中心として
大膳 司
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2009 年 12 巻 p. 71-94

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抄録

 本稿の目的は3つある.

 1つは,臨時教育審議会が設置された1984年以降の様々な審議会答申の中に示された期待される大学教員像をふまえて,1990年以降の大学教員の構造的変化を明らかにすることであった.2つ目は,それらの大学教員の構造的変化や意識の変化が大学教員の教育活動や研究活動にどのように影響を及ぼしているのかを明らかにすることであった.目的の最後は,それらの結果から,大学教員の諸活動を促進するための方途を明らかにすることであった.

 過去20年間における大学教員の構造的変化の特徴は,新任大学教員に対する大学以外の職場を経験した大学教員の比率の増加,全大学教員に対する女性大学教員の比率の上昇,外国人大学教員比率の上昇(1983年の1.2%から2007年の3.4%)であった.全大学教員に対する自校の修了生の比率は,1割程度の減少に止まっていた.

 続いて,大学教員の構造的変化,教育活動や研究活動に対する意識や行動が,大学教員の関心の所在,FD への参加レベル,1週間の総教育活動時間数,1週間の総研究活動時間数,過去3年間の総研究成果量,にどのように影響しているのかを確認した.

 次の4点が明らかになった.

 まず,大学教員の性の違いは,彼らの教育活動や研究活動に関する意識や行動に有意な影響を与えていなかった.

 続いて,大学以外の職場を経験したことのある大学教員の研究成果量は,大学以外の職場を経験したことのない大学教員の研究成果量よりも多かった.

 さらに,現在の職場を卒業した大学教員のFD への参加レベルは,自校出身でない大学教員よりも低い.また,現在の職場を卒業した大学教員の研究成果の総量は,自校出身でない大学教員の研究成果の総量よりも多かった.

 最後に,過去3年間の研究費の多い教員は,過去3年間の研究費の少ない教員に比べて,研究に対して強い関心を持っており,より多くの研究成果を出していた.その傾向は1992年よりも2007年において強くなっていた.

 1992年よりも2007年においての研究時間数が減少しているにもかかわらず,総研究成果の総量は拡大した.これは,競争的研究費の総額は拡大し,大学以外の職場から有能な研究者が採用されたからだと思われる.

 今後,大学教員の教育活動,研究活動,社会サービス活動の質を高めるためには,管理運営時間を減らしてその他の活動時間を増やすこと,大学改革を支援する予算を拡大すること,大学機能を支える有能な人材(社会人,女性,外国人)を養成・採用することに加えて,大学教員の活動を支援する職員の職能開発が重要ではないかと思われる.

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© 2009 日本高等教育学会
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