教育行政学は領域的な学問であり,日本教育行政学会の機関誌に掲載された高等教育関係の論文でも多様な研究方法が用いられてきた.また,領域についても機関誌掲載論文の対象はかなり広範囲に及んでいる.この方法の多様性と対象の広がりの一方で,教育行政学は高等教育を主対象としてこなかった.そのため,高等教育行政研究の各領域で一層の研究の蓄積が必要となるが,本稿では3つの課題を示した.第一に高等教育の政策過程の研究であり,多様なアクターの活動分析とともに行政機関内のよりミクロな分析が必要なこと,第二に高等教育のガバナンス改革の研究であり,諸外国の改革動向をふまえた分析が必要なこと,第三に高等教育制度や行政に関する規範的研究であり,規範に関わる理論構築が必要なことである.