本論では,日本高等教育学会と大学教育学会を比較することを通して,両学会の研究連携のあり方について展望した.高等教育を研究対象とするマクロなアプローチを中心とする日本高等教育学会に対して,大学教育学会は,授業担当者が自らの授業の改善のために,自らの授業を研究対象とするミクロなアプローチを中心としてきた.しかし,この10~15年の間に,両学会に同時に属する会員の割合も多くなり,両者の境界は必ずしも明確ではなくなってきた.教育実践は,それぞれのローカリティにおける「個別性」が問われるが,その「個別性」の表現に,教育の文脈や背景,学生の多様性の記述などとともに,社会・文化・歴史・制度といった「普遍性」ある分類が的確に含まれる必要がある.そのような形で,実践と理論の橋渡しを試みていくことが,今後,日本高等教育学会と大学教育学会の両学会に求められていくであろう.