2010 年 3 巻 2 号 p. 38-49
近年,貿易の自由化に向け国際的な取り組みが活発化している.一方,エネルギー消費の動向は地球温暖化や硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染に関連するだけでなく,エネルギー安全保障の観点からも重要と考えられる.本稿では,先行研究における分析上の問題点,すなわち,内生性や系列相関の問題などに対処することで,貿易の自由化がエネルギー消費量に及ぼす影響を再検討した.その結果,貿易の自由化は,発展途上国(非OECD)では,短期および長期ともに,エネルギー消費を増加させる方向に働く一方で,先進国(OECD)では,短期的にはエネルギー消費を削減するが,長期的にはエネルギー消費を増加させる効果を持つことが明らかとなった.また,短期的な影響は非常に限定的であるが,長期的な影響は大きなものとなることが明らかとなった.