2015 年 18 巻 p. 69-87
本稿の目的は,ここ5年間で事務系・技術系総合職の採用面接を担当したことがある者2,470人を対象に実施した質問紙調査のデータを用いて,大学院が置かれている立ち位置を改めて分析し,そこから政策の課題を提示することにある.日本において,大学院修了者を積極的に採用しようとする企業はいまだ少ないが,社会の大学院を見る目にもその理由があるのではないか.こうした問いを据えつつ検討を加えた結果,(1)事業のグローバル展開のなかで学歴格差に直面する経験,大学院生の面接経験,あるいは評価者本人の大学時代における学習経験が乏しければ,人材としての大学院生の価値に気づくことは難しいこと,(2)日本では,そのような経験を有している者がまだ少ないこと,の2点が明らかになった.そのうえで,企業人は追体験(他社の動向)によって経験不足を補っている側面があることに触れながら,大学院改革そのものの推進のみならず,ビジネスにおいて大学院修了者が活躍した事例をめぐる情報が発信されることに,現状打破の糸口がある可能性を指摘した.