2025 年 28 巻 p. 57-78
児童養護施設入所経験者は「排除状態の典型層」とも評される.彼・彼女たちの大学進学機会の拡充が政策課題として位置づけられたことは,日本の高等教育における多様性の推進を表している.しかし,児童養護施設入所経験者の大学進学に関する「不利益」は,大学入学前,在学中,卒業後それぞれの段階においてみられる.本稿では,児童養護施設入所経験者を積極的に受け入れている私立X大学でのフィールド調査の結果から,彼・彼女たちの「不利益」を描く.そして,明らかになった知見を用いて,「子供の貧困対策に関する大綱」にみられる高等教育段階の包摂の方針,方法について,三点の課題を指摘する.