国際ビジネス研究
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研究論文
地域中小企業国際化の胎動と自立化
日立地域中小企業のDOI(Degree of Internationalization)と自立化の測定
菅田 浩一郎
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2019 年 11 巻 2 号 p. 31-47

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抄録

本稿は日本の地域における中小企業がいかにして国際化を進めるのか、その特徴につき自立化の観点を絡ませつつ、日立地域の中小企業に焦点をあてて考察する。企業城下町的産業集積地において中核企業を頂点とするピラミッド型取引構造の中で従来は下請外注として位置づいてきた中小企業が国際化するためには、独自技術や営業力に裏打ちされた自立性を後ろ盾とする必要がある。そのため、本稿はDOIと自立性の二軸よりなる測定指標を策定し、理想プロフィール手法による分析を行う。

中小企業の国際化については、ニッチ市場向け特殊技術ゆえの海外進出希求、専門性を用いた規模の経済の追求等がその契機として論じられる一方、その形態論としてはUppsalaモデルが援用されるなどしてきた。また中小企業の自立化をめぐっては独自技術の獲得が価格交渉力を引き出し、自立化をもたらすとされてきた。さらに国際化と自立化は相互補完的に進むとも論じられてきた。しかし、日立地域のような企業城下町における中小企業の国際化と自立化につき、測定指標を設定して定量的な分析を試みた研究はない。長年、下請企業とされてきた類の日本の中小企業は国際化することが稀有であったためか、本稿のような二軸の測定分析は重要であるにも関わらず行われてこなかった。本稿の分析枠組みは、従来下請と呼ばれた中小企業の自立化をテコとした国際化を説明する点が理論的貢献となる。

本稿は、日立地域の中小企業49社に対してヒヤリングを行うとともに、41社より左記の測定指標をベースとしたアンケート調査への回答を得て、分析する。DOI測定指標は当該企業の国際化段階、国際化の成果、対外能力、国際化に向けた経営者の認識を問う。その際、欧米の先行研究にみられるDOI測定指標を援用しつつも、日本の地域の中小企業の現実を説明できる指標となるよう修正した。

アンケート調査の結果、多数の企業が自立性を確保していること、国内志向の企業が多数とはいえ、20%近くの企業は国際化を進めていること、中核企業に追従して海外進出している企業は皆無であること等が判明した。

分析から日立地域の中小企業はもはや護送船団方式の下請企業ではないこと、実務的に各企業は業種毎に独特の個性を示しながら、技術力をテコに自立化を進め、各々の持ち味、得意技を磨きながら、国際化、自立化、もしくはその両方を追求していることが判明した。

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