2019 年 11 巻 2 号 p. 49-65
本研究は、台湾半導体産業における組織間関係の構築のプロセスを明らかにする。特に、TSMCと日系装置メーカーJ社に注目する。本研究はインタビュー調査内容や既存研究に基づき、定性分析を行う。主な研究結果は次のように示す。第一に、TSMCとJ社との取引過程について最も重要なことは、販売価格やサービスより、技術そのものである。第二に、両社の組織間関係は初期の単純な市場取引関係から、次第に顧客工場の現場のデモを通じて、後期まで緊密な信頼関係を構築することができる。第三に、両社の初期と後期における組織間関係の変化で鍵となるのは、デモによる相互信頼の強化である。このように、両社の協調的な行動に基づいて、相互の技術能力向上により、結果としては、両社共に高い競争優位をもたらしているのである。