国際ビジネス研究
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研究ノート
米系IT8社のR&D人材とR&D国際化論の再検討
─米国内外国籍人材とH1-Bビザ人材の位置づけの視点から─
林 倬史中山 厚穂
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2020 年 12 巻 2 号 p. 81-94

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抄録

本論文では、米国特許技術の発明者の国籍から研究開発の国際化を再検討し、従来の手法による研究開発の国際化の限界性を明らかにし、分析対象企業の研究開発国際化に関する別の論点からの検証が不可欠であること、そして別の手法に依拠した場合には、これら米国IT 系企業群の研究開発の国際化は、従来とは異なった姿を現してくることを検証していく。

本論文では、米国特許件数ランキングの上位を占めるIT 系の米国多国籍企業8社の研究開発の国際化水準を、USPTO(米国特許商標庁)とUSPATFUL の米国特許データおよびNSF(National Science Foundation) およびUSCIS(米国移民局)のデータによる検証を試みている。その結果見いだされた点は、国境を超えて海外で展開するいわゆるCross-border 型の研究開発の国際化の観点だけからでは、研究開発国際化の程度を十分に説明しえないこと、その際、IT 8社の米国外と米国内外国籍発明者数とを合算すると、米国特許発明の国際化の程度は大幅に高まる点であった。換言すれば、これらIT 系米国多国籍企業によるいわゆる「H1-B ビザ」による外国籍研究開発人材の米国内での活用が、新たな科学技術知識の創造にとってもはや無視しえない役割を果たしている点であった。このことは、したがって、これら企業の新たな外国籍人材の内外での活用を考慮に入れた新たな研究開発国際化の指標が不可欠となっている ということでもある。

とりわけ、米系IT 8社、特にAmazon をはじめとするGAFA 4社の研究開発システムを外国籍人材の側面から吟味した場合には、次の点が指摘されえた。すなわち、特許技術の発明という知識創造の仕組みをその国際的システムから見た場合には、そこには単なる研究開発のCross-border 的側面のみならず、米国内における外国籍R&D 人材の戦略的活用が重要な役割を果たしているという特質が見いだされる点である。したがって、本論文の目的は米系IT 企業のグローバルなR&D 活動における人材活用戦略を“Outward”と“Inward”の両側面から検証する必要性を提示することでもある。

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