国際ビジネス研究
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コーポレート・ガバナンスを核とした戦略的統合政策
明山 健師
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2011 年 3 巻 2 号 p. 99-113

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抄録
欧州委員会は、1968年からEU指令を制定し、域内の経営システムの調和を開始した。そして、2001年に欧州株式会社法(SE法)を制定し、EU加盟各国の会社制度を統合した。これにより、EU加盟各国の経営システムに共通性と高度な自由という息吹を埋め込んだ。このうえで、企業レベルで独自の経営システムが創造される基盤を構築したのである。一連のプロセスで、欧州委員会は、多様性を基礎としつつ、企業の経営活動の自由を最高度に尊重する経営システムを創り上げた。さらに、EUの経営システムに経営の自由を埋め込んだ一方で、企業に対して独自に、持続可能な発展を可能とする「社会に信頼される企業」となるべく、「コーポレート・ガバナンス」や「企業の社会的責任」、「内部統制」、「危機管理」などの体制を整えることを期待したのである。EUにおける経営システムの統合は、原則が核となり、EUから加盟国へ、そして企業へと浸透していた。まず、経営システムの調和は、EUレベルで、既存の経営システムを調和し一定の共通性を持たせる展開であった。つぎに、経営システムの統合は、加盟国レベル、EUレベルで統合された経営システムを採用することにより、域内の経営システムを統合しようとする展開であった。そして、経営システムの創造は、企業レベルで、合併やコーポレート・ガバナンス改革などにおいて、「協定規約(MOU)」などのコーポレート・ガバナンス規範を用いて企業独自の経営システムを構築する展開であった。そのような、経営システムの創造は、企業が営利を目的としているため、企業競争力の強化をという絶対的価値観を基盤としたものであった。くわえて、社会からの信頼を得るために、MOUや原則が策定される会議に、利害関係者が積極的に参加できるシステムを構築することにより、企業不祥事への対処を実現することが明らかになった。さらに、EU市場の統一により企業の移転や合併が促進されたことは、加盟国にも、有力企業の流出や加盟国レベルでの統合の促進などの多くの影響を与えていることが明らかになった。
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© 2011 国際ビジネス研究学会
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