国際ビジネス研究
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M&Aを通じた中国民族系自動車メーカーの成長戦略 : 異なるビジネスモデルの統合と併存を同時に追求するマネジメント
蒋 瑜潔
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2014 年 6 巻 2 号 p. 49-62

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抄録

現在多くの新興国の企業がクロスボーターM&Aを通じて、必要な経営資源を獲得しながら、急速な海外進出を試みている。ただし、新興国企業は経営資源や組織能力の蓄積が相対的に乏しく、M&A実施後も複雑・困難な経営課題に直面すると考えられる。本研究の目的は、このような新興国企業はクロスボーダーM&Aにおけて、どのように先進国企業を含む相手企業をコントロールし、必要な経営資源を獲得しながら、企業成長を実現しているかについて探求することである。本研究では、中国民族系自動車メーカーの吉利汽車(ジーリー)がボルボ・カーズとの間で実施したM&Aの事例を取り上げ、定性分析を行う。新興国企業のクロスボーターM&Aでは、相手側企業のビジネスモデルとの間の異質性の高さや、事業経験や組織文化の違いの大きなどの問題に加え、経営統合と戦略提携のメリットも同時に追求するという複雑・困難な課題に直面することが少なくない。こうした中で、M&A実施後の事業運営を軌道に乗せ、一定の成果を実現する上では、企業ガバナンスと戦略を迅速に定め、経営統合を部分的に実施する一方で、統合しない分野を明確に定めておくことが、重要であるという点が、本研究の主張である。本事例における事業展開はまだ緒に着いたばかりであり、現時点でその成否について断定することはできない。また、本研究では単一の事例研究という研究方法を採用しているため、本事例のその後の得られた知見を一般化し、理論化する上では、自ずと限界がある。そのため、今後は展開をフォローするとともに、他のM&A事例との比較研究も行っていきたい。

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© 2014 国際ビジネス研究学会
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