国際ビジネス研究
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トランスナショナル化する米系MNCsにおける社内調整プロセスの研究 : 日本現地法人のケーススタディ
三輪 祥宏
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2014 年 6 巻 2 号 p. 63-75

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抄録

米系MNCsの多くはトランスナショナル化しつつある。そこで米系MNCsの在外現法の自律的な行動には一定以上の制約がかかるようになっている。とくに過去に「進化」を経験し、時空間的な距離もあることで、独立的に独自の意思決定を行うことに慣れてきた日本現法では、リソースや方式等について都度MNCs全体との間で調整が必要な状況は新たな課題となっている。上記の課題解決に向けて、トランスナショナル化を前提にした日本現法とMNCsとの調整プロセスについて確認することが求められる。本稿ではトランスナショナル化の影響として、MNCsの意思決定の中枢が旧来の「本社」に固定されないこと、「調整」が前提となるために組織内での合理化は絶対的ではなく相対的であること、の2点に注目し、これらの捕捉に向けてルーマンによるコミュニケーションシステム論を分析視座とした。すなわち、ひとつの施策や意思決定に複数の「意味づけ」がなされ、事前に設定された規則やルールだけにとらわれず自己参照-相互参照に応じて事後的に成立する、という立場に立つ。上記の分析視座に基づき、事例としてHP社の日本現法である日本HPにおけるCollaboという独自の社内ITシステム導入を選択し、分析を行った。その結果、トランスナショナル化により在外現法とMNCsの間には複数のチャネルやコンテクストが存在することに名理、多様な調整が可能となるため、行為に対して的確な価値観(意味づけ)を選択し、コニュニケーションを行っていくことの重要性が確認された。そのうえで、日本現法がMNCsの中枢に対して行う調整プロセスとしては、以下のような仮説が導出された。(1)一定以上の「業務上の繋り」を持ち、(2)それを基に的確に「意味づけ」(場合によっては、「意味づけ」を切換)して、(3)「意味づけ」を「見せる化」することで的確に認知と承認を得ることで(4)「事後的な合理化」を成立させることが可能である(同時に、非合理的と考えられた「意味づけ」は「なかったこと」にできる)。次に(5)「合理化」された「意味づけ」の過程にてスキルが拡充されると、(6)新たな「意味づけ」を拡充でき、(7)MNCsの別の中枢との間で「合理化」を成立させることで再強化される。

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