国際保健医療
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Print ISSN : 0917-6543
特集 ワークショップ「日本の国際保健医療協力:パートナーシップの時代の中で」
真の「主体性」醸成への挑戦
-ラオスにおけるKIDSMILEプロジェクトの取り組み-
岩本 あづさ
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2006 年 21 巻 2 号 p. 93-101

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抄録
ラオスではこれまで多くの援助が行われてきたが、当事者の活動としてその後も定着するものは少なく、各ドナーの撤退と同時にその活動も減退してしまうことが多かった。そのようなテーマ別縦割プログラムの反省をもとに、「JICA子どものための小児保健サービス強化プロジェクト(KIDSMILEプロジェクト)」が2002年に開始され、現在進行中である。このプロジェクトは小児保健行政マネージメント強化を最終的な目標としているが、以下に述べる3つの点で従来とは異なるアプローチ方法をとっている。
まず、ある特定の疾患や病院施設を対象とせずに保健省各局と2つの県保健局をカウンターパートとし、縦横両方の連携を重視した非常に幅広い関係者を有する。特に「横の連携」では、ドナーと当事国あるいはドナー間の「パートナーシップ」のみならず、まず保健省・局内の関連各部局間の「ネットワーク」が重要であることを強調している。次に当プロジェクトは既存のヘルスパッケージを持ち込むことを極力避け、ラオス側が主体的に「これは自分達の本来の仕事である」と考える本来業務を自分達で行っていくことを、日本人もともに考えともに支援するという基本姿勢をとっている。第三は既存のシステムや人材を最大活用するという大原則である。日本側からの資金やモノの投入は最小限に抑え、ラオスに現在存在するリソースを有効に活用し、当プロジェクト終了後もラオス側が当事者として継続して行ける活動を目指している。
上記の実施はけっして容易なことではなく、プロジェクトの基本理念や形態はラオスに多数存在する他ドナーのそれとは一線を画し、何らかの答を出すためまでに時間がかかる。それでもこのアプローチは、今までにないマネージメント強化の1例として注目されている。ラオス側の真の「主体性」醸成を目指して、KIDSMILEは従来の「プロジェクト」というスキームを越えた挑戦を続けている。
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© 2006 日本国際保健医療学会
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