抄録
ベトナムにおいて保健活動は社会での大きな関心事である。特に母子保健には特別な関心が払われている。国の母子保健、特に山岳地帯に住む少数民族のための母子保健の改善を進める過程に多くの困難や課題が立ちはだかっている。特にそのような地域では、医療ケアを受けるまでのアクセスの悪さや、質の良くない産科や新生児ケアが、高い新生児死亡率に関与している。それらは現在、乳児死亡率の約70%、そして5歳未満児死亡率の50%以上を数えるまでになっている。
多くの母親や医療従事者は、地域や事業ごとに変わる母子保健に関する記録を書くために使われている多くの種類のカードや薄い記録ノートによって混乱している。家族、特に教育レベルの低い家族は、時として彼らのカードや薄い記録ノートをなくしてしまうことがある。ベトナム保健省は、このような問題を克服するために尽力をしている。
1998年に総合的な母子健康手帳が日本のNGOの「ベトナムの子ども達を支援する会」によってメコンデルタにあるベンチェ省に紹介された。そして2004年までにベンチェ省のすべての村で母子健康手帳が使われるようになった。この取り組みが、現在の保健省が保健省版母子健康手帳を作った流れの発端となっている。
2006年にベンチェ省で第5回母子健康手帳シンポジウムが開催され、多くのベトナム人が参加して国際ゲストと共に、母子健康手帳の導入の経過や関連のある経験を話し合った。シンポジウムに出た保健省、関連機関、そして各省の保健局代表のベトナム人の参加者達は、ベンチェ省での成功や各国の経験を学び、ベトナムにおける母子健康手帳の全国使用に大きな関心を持ち始めた。
2008年に保健省は全国版母子健康手帳の使用計画について取り組みを始め、2009年には全国版母子健康手帳とガイドラインの開発を行い、全国的な使用に先駆けての試行使用を開始した。保健省は、いくつかの国際機関がこのような母子健康手帳の使用を含む母子保健改善事業に協力することを願っている。なぜなら母子健康手帳は、ベトナムにおいてミレニアム開発目標の4と5への到達を助けるツールとして特に期待されているからである。