国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
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24 巻, 2 号
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特集
  • Sirikul ISARANURUG
    2009 年24 巻2 号 p. 61-66
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
     The maternal and child health service in Thailand was originally established in 1918, and the first official maternal and child heath handbook was published in 1985. Since then, the handbook has been a major feature of the Thai MCH service and an important instrument for improving the health of pregnant women and children in Thailand. It has been periodically reviewed, revised and updated to maintain currency and to meet the ever changing and evolving health care needs of Thai women and children. This paper outlines the origins and history of this handbook. It comments briefly on its utilization which is still less widespread than expected, especially among clients of private health services. Future challenges are to promote use of the handbook through all types of health facilities throughout Thailand, so as to increase its utilization and further improve the quality of maternal and child health services.
  • Dinh Thi Phuong HOA, 板東 あけみ
    2009 年24 巻2 号 p. 67-71
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
     ベトナムにおいて保健活動は社会での大きな関心事である。特に母子保健には特別な関心が払われている。国の母子保健、特に山岳地帯に住む少数民族のための母子保健の改善を進める過程に多くの困難や課題が立ちはだかっている。特にそのような地域では、医療ケアを受けるまでのアクセスの悪さや、質の良くない産科や新生児ケアが、高い新生児死亡率に関与している。それらは現在、乳児死亡率の約70%、そして5歳未満児死亡率の50%以上を数えるまでになっている。
     多くの母親や医療従事者は、地域や事業ごとに変わる母子保健に関する記録を書くために使われている多くの種類のカードや薄い記録ノートによって混乱している。家族、特に教育レベルの低い家族は、時として彼らのカードや薄い記録ノートをなくしてしまうことがある。ベトナム保健省は、このような問題を克服するために尽力をしている。
     1998年に総合的な母子健康手帳が日本のNGOの「ベトナムの子ども達を支援する会」によってメコンデルタにあるベンチェ省に紹介された。そして2004年までにベンチェ省のすべての村で母子健康手帳が使われるようになった。この取り組みが、現在の保健省が保健省版母子健康手帳を作った流れの発端となっている。
     2006年にベンチェ省で第5回母子健康手帳シンポジウムが開催され、多くのベトナム人が参加して国際ゲストと共に、母子健康手帳の導入の経過や関連のある経験を話し合った。シンポジウムに出た保健省、関連機関、そして各省の保健局代表のベトナム人の参加者達は、ベンチェ省での成功や各国の経験を学び、ベトナムにおける母子健康手帳の全国使用に大きな関心を持ち始めた。
     2008年に保健省は全国版母子健康手帳の使用計画について取り組みを始め、2009年には全国版母子健康手帳とガイドラインの開発を行い、全国的な使用に先駆けての試行使用を開始した。保健省は、いくつかの国際機関がこのような母子健康手帳の使用を含む母子保健改善事業に協力することを願っている。なぜなら母子健康手帳は、ベトナムにおいてミレニアム開発目標の4と5への到達を助けるツールとして特に期待されているからである。
  • Shafi Ullah BHUIYAN
    2009 年24 巻2 号 p. 73-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
     In many countries, maternal and child health (MCH) handbooks help ensure the quality and continuity of health care for mothers and children. In Bangladesh the main health communication tools currently in use, such as treatment cards, immunization cards, and antenatal and postnatal cards, support only one-way communication. There is no evidence that mothers in Bangladesh are convinced of the cards' merits. A pilot MCH handbook project was carried out in Bangladesh in 2002 by the author, as a PhD student in the International Collaboration Division of Japan's Osaka University. The study showed that the MCH handbook had strong positive impacts on mothers' MCH knowledge, practices, record keeping, and service utilization and on the quality of MCH services. Since 2006 the Government of Bangladesh has approved project-based utilization of MCH handbooks, and some NGOs are now implementing projects using MCH handbooks. Building on the findings of the earlier pilot study, and with 2007-2009 support from the Japan Society for Promotion of Sciences (JSPS), researchers have been conducting a community-based study of the use of the MCH handbook, in preparation in for potential nationwide expansion of MCH handbook use in Bangladesh.
原著
  • 塩田 勉, 田宮 菜奈子, 田淵 幸一郎, 吉田 修, 山本 秀樹
    2009 年24 巻2 号 p. 77-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    背景
     ザンビアはアフリカ大陸南方に位置する内陸国である。日本の約2倍の面積を有し、人口は約1200万人、多くの部族が共存する。乳児死亡率は102, 5歳未満児死亡率182(対出生千人)と小児の健康水準は非常に低い。アフリカ諸国における、小児の健康状態と母親の教育レベルとの関連を示す研究はこれまでも幾つかあったが、その結果は必ずしも一定のものではなく、ザンビアにおける研究はほとんど存在しなかった。また、地域保健医療サービスと小児の健康状態との関連性についても、ザンビアにおける考察が少ないという現状がある。
    目的
     ザンビアの農村において、母親の教育とアウトリーチサービスが小児の死亡率に与える影響を明らかにする。
    方法
     ザンビアの首都ルサカから70km程北に位置する農村、モンボシ地区にて5歳以下の子どもをもつ母親73人に対し、インタビューを行った。これまでに亡くなった子どもについて及び、母親の教育歴や保健知識と、情報の入手源等について尋ねた。同時に母親の識字率についても、ボードに書かれたある指示を理解できるかどうか確認するという方法で、調査を行った。
    小児の死亡率は、これまでに各世帯で亡くなった子どもの数と世帯中の子どもの数から算出した。また、この地域では、アウトリーチプログラムといい、最寄りのヘルスセンターの医療者が月に一度モンボシ地区に赴き、出張診療、健康診断等を行っている。
    結果
     これまでに学校教育を受けたことのある母親は80%、全く受けたことのない母親は20%であり、母親の教育の有無と小児の死亡率の関係は有意であった(p=0.015)。つまり、教育を受けたことのある母親の子どもほど、死亡数が少なかった。母親の識字率は42.9%であり、母親の識字率と小児の死亡率に関しても、識字能力がある母親の子どもほど死亡数が少ないという傾向があった。また、アウトリーチプログラムから健康に関する情報を得ているとした母親と小児の死亡率に関しても、有意であった。(p=0.019)
    母親の年齢による結果への影響を考慮し、30歳未満と30歳以上とに層別化し、解析を行った結果、母親の教育やアウトリーチプログラムは、より若い母親に対して影響が大きいことが示唆された。
    結論
     女性への教育と地域でのアウトリーチサービスは、小児の健康において重要であり、それぞれ小児の死亡率を下げることがわかった。女児の教育の機会を増やすと同時に、地域の人的資源を活用した地域保健医療システムの構築が必要である。
資料
  • 樋口 まち子
    2009 年24 巻2 号 p. 87-95
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    目的
     アジア地域は世界でもっとも急速に高齢化が進んでおり、WHOは、今後45年間に60歳以上の人口が現在の3倍に達すると予測している。タイ国では、2001年以降、ヘルスプロモーション理念に沿って、高齢者の潜在力を生かしながら、高齢者にとって住みやすい地域づくりを目指した政策が実施されている。その一環として、タイ伝統医療を再評価し、近代医療システムへの融合を図るとともに、高齢者が主体的に参加できるようなプログラムを実施している。
     タイ国の高齢者の保健医療については様々な分野で研究されてきたが、高齢者を対象とした伝統的健康行動に関する研究は緒についたところである。そこで、タイ国東北部の2村の高齢者を対象に健康維持・増進、疾病時の対処に関する伝統的健康行動を比較検討した。
    方法
     タイ国東北部の都市部近郊と地方部の2村を対象に参与観察によって村の概要を把握し、その後、60歳以上の住民、25人と18人に対して半構造化質問票を用いて、伝統的健康行動について聞き取り調査を実施し、インタビューガイドに沿って比較分析した。
    結果
     両村とも年収は全国平均の半分以下であり、地方部の住民は半数以上の高齢者世帯が親族からの送金で、都市近郊の住民は三世代が同居し、農閑期の農業外収入を主なる収入源として生活を営んでいた。
     薬草は、両村とも大多数の住民が家屋敷地内に栽培、または自然繁殖させていたが、薬草を煎じて常用したり、食材を「熱い」、「冷たい」と認識し、健康を意識した食生活及び清潔行動は地方部の住民が熱心に実践していた。さらに、タイマッサージの利用者の割合は、村内で無料で利用できる機会のある、地方部の方が多かったが、都市近郊部では有料で、しかも、物理的に離れた地域のマッサージを利用していた。
    結論
     研究対象の2村は、タイ国内では所得指数で貧困地域として位置づけられている。両村間の距離は20キロであるが、使用している薬草や伝統的健康行動に差異が見られた。また、慢性疾患罹患の割合が少ない地方部では、都市近郊に比較して伝統的理念に基づいた日常生活を営んでいた。
  • 垣本 和宏
    2009 年24 巻2 号 p. 97-105
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    緒言
     インドネシア共和国は我が国の政治経済の重要なパートナーであり、保健分野に関しても多くの日本人が関心を持っている。しかしながら、インドネシアの保健医療に関する情報収集は日本では容易でないことから、筆者が聞き取りや公表されている資料によって収集した情報を可能な限り共有したく、私見も交えながら執筆した。
    概況
     インドネシアは、過去には中央政府主導による保健医療行政システムの整備により、インドネシアの健康水準の改善を図ってきた。しかしながら、1997年のアジア経済危機や2001年1月からの急速な地方分権化政策により保健医療行政システムや人材育成、コミュニティー参加の機能に影響し、様々な医療サービスの地域間格差を広げた。
    保健行政システム
     2007年の予算の執行率は80%を超えているが、会計年度前半の執行は20%のみであった。社会保障として、2008年から公衆衛生保障基金(JAMKESMAS)が始まり、無料診療を受ける国民が増加している。保健医療施設は、中央または地方政府運営の病院や保健所(Puskesmas)に加えて、コミュニティーが運営する統合保健ポスト(Posyandu)などがあるが、その機能の改善が課題となっている。
    保健指標
     2007年の0歳時平均余命は70.5歳で、母子保健指標は近年改善が見られるが周辺国と比較すると悪い。また、HIVや鳥インフルエンザの感染者は増加傾向にあり、特に鳥インフルエンザは世界で最も発症例も死亡例も多い。
    保健政策
     「保健省戦略的計画(RENSTRA DEPKES 2005-2009)」が保健政策の中心となっているが、特に地方政府での計画評価能力や報告順守に問題があり、計画策定能力に課題を残している。疾病別では母子保健や感染症が重要課題で、さらに、現保健大臣は健康な生活のための社会動員とコミュニティー強化を達成することを目標にDesa Siaga (Desa = village, Siaga = prepared / alert)プログラムを最優先政策としている。
    結語
     インドネシアは経済危機や急速な地方分権化の影響を受け、保健指標は必ずしも満足に改善していない。地方政府での計画策定能力の問題に加え、コミュニティーが運営してきた保健施設の弱体化が課題で、これらの再強化が政策の中心となっている。また、増え続ける鳥インフルエンザやHIVなどの感染症や母子保健が優先課題となっている
活動報告
  • -換金作物への過剰な転換がもたらしたもの-
    小林 勉, 山本 秀樹
    2009 年24 巻2 号 p. 107-113
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    目的
     現在、カンボジアでは、国内での食糧生産は十分ではない。筆者が所属しているアジア農村協力ネットワーク岡山は、現地NGOである、Cambodian Federal Farmers Organizationと協働し農業プロジェクトを行っている。カンボジアには農村部および、都市部の貧困層においては栄養不良との関連が考えられる疾病がある。これらの問題を緩和するために、またカンボジアの社会がより持続可能なものとなるために、野菜栽培を中心にした農業振興の重要性について調査した。
    方法
     カンボジアの農業事情を調べるために、首都プノンペンの市場を2カ所見学した。次にコンポンチャム州にて農地の利用状況を視察した。また、農村部の市場と、農家を訪問し、農村部での日常の食事について調査した。農業生産については農林省統計を調べた。栄養不良の状況は関連文献を調べた。
    結果
     プノンペンでは、生鮮野菜が毎日大量に販売されていたが、ほとんどべトナムからの輸入品であった。主食の米に関しては農村部では灌漑が少なく稲単作の地域が多く、技術的にも問題があるものの、米の生産量は満たされていた。また近年、バイオ燃料の需要増大に伴い、キャッサバ栽培が増えていた。またべトナムからの食品輸入について、カンボジア人はあまり好印象を持っておらず、農薬問題や、鮮度に不満を持っていることがわかった。プノンペンにおいてスーパーやレストランの経営者は国産品を希望していた。農村でも野菜の生産、消費ともにわずかであった。普段は大量の米飯と塩辛い小魚の干物、少量のハーブ類を摂取しており、野菜は贅沢品であった。また栄養不良による障害が多く報告されていた。
    結語
     カンボジアでは輸入品である野菜は高価というイメージであり、日常的な摂食は少ない。米の多食と栄養バランスに問題がある食事により栄養不良が多くみられ、改善の必要性は大きい。また農業振興は今後のカンボジアの発展には非常に重要であると考えられる。
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