国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
原著
新生児の低体温症の評価:モロッコの地方母子専門病院における危険死亡因子の検討
小林 智幸Ghita Sami.Amina E.
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 25 巻 3 号 p. 155-160

詳細
抄録
目的
モロッコ王国の地方母子専門病院で測定可能である新生児の低体温症の予後予測因子を見つけること。
方法
モロッコ王国の母子専門の地方病院であるパニヨン病院に、2005年10月から2007年7月までの間に低体温症で入院した新生児52例を対象にした。同院では設備や患者層(70%以上は貧困層)の面から、詳細な検査を行うことは実際的ではないため、測定可能な因子として入院時直腸温、在胎週数、入院時体重、入院時の日齢、出生場所について死亡率との関係を比較検討した。
結果
52例中36例が生存し、16例が死亡した。生存例と死亡例の比較では、各因子のうち入院時直腸温のみで有意差が認められた(31.1±2.7℃ vs. 28.7±2.3℃; mean±SD, p=0.003)。世界保健機構の低体温症の分類を用い、severe hypothermiaとmoderate hypothermiaで死亡率を比較すると有意差が認められた(45.2% vs. 9.5%, p=0.006)。他の因子の影響も考慮しロジスティック回帰分析を行ったが、やはり直腸温のみが死亡率と相関が認められた(odds ratio 1.408, 95% confidence interval 1.088-1.821, p=0.009)。
結論
モロッコ王国の地方母子専門病院で測定可能な因子のうち低体温症の死亡率と相関が認められたのは入院時の直腸温のみであった。専門設備が少ない地方の病院では、新生児の低体温症は入院時直腸温を測定することによって予後を推測することが可能であると思われた。
著者関連情報
© 2010 日本国際保健医療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top