国際保健医療
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総説
サハラ以南アフリカにおけるエイズ孤児のメンタルヘルスに関する文献検討—ナラティブレビュー—
佐藤 瑞花陳 三妹新福 洋子
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2023 年 38 巻 2 号 p. 29-41

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抄録

目的

  エイズ孤児のメンタルヘルスに対する、より効果的な介入や支援方法を考察するため、エイズ孤児の多くが住むサハラ以南アフリカにおいて行われた研究の文献検討を通じて、エイズ孤児のメンタルヘルスに影響を与える要因を検討する。

方法

  複数の医学データベース(医学中央雑誌Web版、PubMed)を用い、[エイズ孤児]および[サハラ以南アフリカ]等をキーワードとして、2010年以降に出版された文献を検索した。採択基準をすべて満たした9件の文献をレビューの対象とした。

結果

  文献のレビューから、エイズ孤児のメンタルヘルスに影響を与える要因を偏見・差別・虐待・いじめなどの「社会文化・社会心理学的要因」、教育、貧困などの「物理的経済的要因」、家族・身近な人々に関する要因と学校との繋がりなどの「家族・コミュニティ的要因」の3つに分類した結果、以下の知見を得た。社会文化・社会心理学的要因に関しては、エイズ孤児は児童虐待や社会的差別、社会的スティグマの経験が多いこと、貧困を経験するエイズ孤児は家族からの差別の危険性があること、都市部に住むエイズ孤児はいじめを多く経験することが示された。家族・コミュニティ的要因については、親の喪失によってエイズ孤児自身が世帯主となることや環境が変化することで落ち込みや心配、恐怖、スティグマを経験する傾向があること、親の喪失により学業成績の低下や不十分なメンタルヘルスサービスを含むリソースアクセスの制限、心理社会的幸福の低下などエイズ孤児にとって不利な発達上の結果をもたらしていた。養育者からのケア不足や養育者の精神的健康も子どもの発達とメンタルヘルスなどに関連していることが示された。物理的経済的要因については、人間の尊厳や精神的安定につながるソーシャルサポートが、エイズ孤児の住む環境では著しく阻害されていた。エイズ孤児において特に、貧困が食糧不足や栄養失調、発育阻害と関連していることや、児童労働、女性の危険な性行為にもつながっていた。一方で、養育者や教師からのソーシャルサポートはエイズ孤児のメンタルヘルスにとって良い影響を与えていた。教育に関して、エイズ孤児は学校の中退率が高いが、学校とのつながりはメンタルヘルスに良い影響を与えていた。

結論

  本研究で、エイズ孤児のメンタルヘルスの促進要因と阻害要因を明らかにした。特にソーシャルサポートの肯定的な影響は、サハラ以南アフリカにおけるエイズ孤児に対する効果的なメンタルヘルスケアプログラムの開発に寄与すると考える。これからのエイズ孤児の抱えるさまざまな問題に着目して多角的に検討する必要がある。

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