国際保健医療
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原著
コリアンコミュニティに居住する育児期在日コリアン母親の家族形成と育児を支えるソーシャル・キャピタルの醸成
髙 知恵古山 美穂宮下 ルリ子渡邊 香織
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2023 年 38 巻 2 号 p. 43-52

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抄録

目的

  日本および韓国では少子化が大きな課題となっており、在日コリアンの人口構成も同様に少子高齢化を示している。しかし、コリアタウンに居住する在日コリアンは日本人コミュニティに居住する在日コリアンに比べ、子どもの数が多いと言われている。地域での子育て支援として、人々の協調行動が活発化することで社会の効率性を高められるというソーシャル・キャピタル(以下、SC)が注目されている。本研究の目的は、コリアンコミュニティに居住する在日コリアン母親の家族形成と育児を支えるSCとその醸成について明らかにすることである。

方法

  2019年4~7月、機縁法で得られたコリアンコミュニティに居住する在日コリアン母親10名を対象に、現在の家族形成に至った思い、育児を支えるSCなどについて半構成的面接を実施し、質的記述的に分析した。所属大学の研究倫理委員会の承認を得、対象者からは文書による同意を得た。

結果

  『現在の家族形成に至った思い』として、12サブカテゴリー、3カテゴリーを、『育児を支えるSC』として、11サブカテゴリー、4カテゴリーを抽出した。コリアンコミュニティに居住する在日コリアン母親は、【子産み、子育てへの思案】をしながらも、【意識する結婚観】と【多子・家族形成への肯定的な思い】を抱きながら家族形成に至っており、【利用したくても利用しにいく家事育児支援】への不満足感はあるが、【安心と絆をうむコリアンコミュニティ】の中で【実質的にも精神的にも家事育児の支えとなる人たち】と【家事育児の一助となるサービス】を上手く活用することが、育児を支えるSCの醸成となっていた。

結論

  コリアンコミュニティの共通する規範、価値観、理解を伴ったネットワークは長い年月を経ながら在日コリアン母親にとっての【安心と絆をうむコリアンコミュニティ】となっており、このようなSCの醸成が多子、育児を肯定的に捉え、家族形成を支えている可能性が示された。

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