社会言語科学
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研究論文
日本語会話におけるタイ語母語話者の不満表明の言語行動―不満表明フレームから遊びフレームへのリフレーミングに着目して―
ウォンサミン スリーラット
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2018 年 21 巻 1 号 p. 239-254

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抄録

冗談を言う,つまり遊びフレームへのリフレーミングは精神的に負担がかかる場面の緊張を緩和させる重要な談話ストラテジーとして普遍的に用いられるとされる.本研究では,遊びフレームへのリフレーミングに着目して,日本語会話におけるタイ語母語話者の不満表明の特徴を分析した.その結果,不満表明の場面でタイ語母語話者による遊びフレームへのリフレーミングが見られた.不満を言う側としてのタイ語母語話者は状況解決を優先するのではなく,相手と所々冗談を交えながら会話を進めている.次に,遊びフレームにおける冗談の内容別に相手がリフレーミングを認識可能とする手がかりを分類した結果,相手のフェイスを侵害する冗談「フェイス侵害あり」には,「笑い」,「繰り返し」,「プロソディーの変化」,「スタイル・シフト」,「直接引用発話」の手がかりが用いられているが,単に笑いを誘う冗談「フェイス侵害なし」には「笑い」,「繰り返し」,「プロソディーの変化」の手がかりの使用のみが見られた.これらの手がかりを用いることは,今ここで行われている活動のおかしさをより際立たせる作用があり,遊びフレームへのリフレーミングの認識が促進されると考えられる.

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© 2018 社会言語科学会
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