2020 年 23 巻 1 号 p. 116-131
本稿では,博物館(日本科学未来館)でなされる子供が参与する展示物解説活動を対象とした相互行為分析の結果を報告する.展示物解説において,保護者は子供に対して様々な援助を行う.断片において,保護者は,子供の発言機会や,展示物に対する理解・見えに関する問題に対する援助を,発話や身体的振る舞い,さらに子供の身体を操作することで行っていた.そして援助を行うとき,保護者は,回答者や質問者として参与していないことを示していた.このような保護者の援助は,単に当座の子供の問題を解決するだけではなく,展示物解説活動そのものの展開に貢献するものとなっている.解説を行う未来館の科学コミュニケーター(SC)と保護者は必ずしも教育の専門家ではないが,子供の展示物解説活動への参与を援助することで,彼らを「主役」として位置づけながら,子供を含む展示物解説活動を協働して行っていた.以上の分析結果は,博物館の目的である教育がいかに実践されているかを詳らかにするものであり,日常生活の中で起こりうる多様な教育・学習をより広く理解することの端緒を提供するものである.