社会言語科学
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研究論文
日本語教師歴の違いによるスピーキングテスト判定結果の比較―状況対応タスクに対する判定結果要因の分析―
ボイクマン 総子根本 愛子松下 達彦
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2022 年 24 巻 2 号 p. 37-50

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抄録

本研究の目的は,プレースメントのためのスピーキングテストの妥当性検証の一環として,状況対応タスクに対する判定者要因を分析することで,判定方法を改善する基礎資料を得ることにある.本研究では,10年以上の日本語教師経験のある教師(10年以上教師)33名,経験年数が3年から10年の教師15名(10年未満教師),非日本語教師(非教師)64名の計112名を対象に状況対応タスクの判定実験を行い,教師と非教師で信頼性に差があるか,教師経験の違いによってテストの判定方法が異なるか,及び,判定の観点が異なるかを検討した.結果,教師と非教師でテスト判定の信頼性に大差は見られなかったものの,非教師の方が中級から上級レベルの弁別に難があった.そして,10年以上教師は非教師より音声サンプルを重視する傾向があった.また,非教師はレベルによって判定の観点を変えることはないのに対し,教師はレベルによって注目する観点を―初級前半は「流暢さ」,初級後半は「テキストの型」,中級前期と中期は「表現の豊かさ」,中級後期と上級は「対人配慮」と「流暢さ」―と変えていた.なお,この傾向は,10年以上教師に,より強く見られた.以上のことから,非教師が判定者となる場合,教師より入念なトレーニングを実施する必要性があることとレベルごとのベンチマークとなる判断基準を判定者トレーニングでは強調する必要があることが示唆された.

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