抄録
地球史における花崗岩質大陸地殻の形成機構を明らかにすることは,生命の発生・進化や大気組成の変遷などを含めた地球の進化過程の解明に通じる重要な研究課題である.
スラブメルティングで形成されたと考えられる太古代の花崗岩類(TTG)やアダカイトは,花崗岩質大陸地殻の形成機構解明の鍵を握る重要な岩石であるが,それらの成因については未解決の問題も多い.今回は,スラブメルティングにおける副成分鉱物の安定性を確認する目的で,実験岩石学的検討を行なった.試料をAuカプセルに封入し,愛媛大学理学部のピストン・シリンダー型高圧発生装置を使用し,2.0GPa, 1000℃ (115h)および2.0GPa, 900℃ (440h)の2種類の条件下で実験を行なった.いずれの実験生成物においても,ガラス,単斜輝石,ザクロ石のほか,少量のルチルとともに特徴的にチタン石が認められた.今回の実験結果から,スラブメルティングの溶融残存相に,ルチルとともにチタン石が含まれることが明らかとなった.