抄録
日本初の月着陸探査であるSELENE-2に広帯域地震計を搭載する提案をおこなっている.この講演ではその観測の科学的な意義,地震計開発の現状を紹介する.アポロ計画では一辺約1000kmの三角形地震計ネットワークを構築し深さ1000kmより浅い月の内部構造に関して情報をもたらした.しかし,地震計の感度が十分でなかったため,しばしば発生する深発月震は主にPEAKED MODEと呼ばれる峡帯域モードでのみで観測されていた.また,月震記録には月表層の破砕帯による強い散乱波が長時間卓越し,月深部での反射波や変換波を覆い隠している.こうした問題に対処するために我々は周期50秒から50Hzまでの広い帯域の地震観測を行うことを提案している.月表層の散乱層の影響は周期10秒以上では軽減されることが推定されているので長周期波形を使うことで月深部の情報を引き出すことができる.月表層構造,月の地殻厚,中心核,月震メカニズムの推定が科学目標に挙げられる.