抄録
転位は鉱物の塑性変形を示す直接的証拠である.マントル捕獲岩を構成する鉱物には流体包有物が時折観察される.オリビン中の流体包有物周辺を観察すると,[100]方向に卓越した転位組織が見られる.また,転位密度は流体包有物から離れるにしたがって減少する.これは流体包有物の内圧に因るオリビンの塑性変形を示しており,転位の発達方位は軸毎の降伏応力の違いを反映しているものと考えられる.一方,同じマントル捕獲岩を構成する斜方輝石中の流体包有物周辺には転位がほとんど見られない.このことはオリビンと比べて斜方輝石が高い降伏応力を有することを示している.このように流体包有物周辺の転位組織の観察は,様々な鉱物のレオロジーを理解するための新たな切り口として利用できる可能性を秘めている.