抄録
はやぶさ探査機が回収した7粒の小惑星イトカワ塵に対して、光学顕微鏡、SEM、EPMA、ラマン分光、放射光XRD・XANESによる鉱物学的研究を行った。分析した塵は主にカンラン石と斜長石から成り、弱い衝撃変成を受けていた(衝撃ステージ:S2)。カンラン石はFo70-73で、放射光XRDで得られた格子サイズと調和的であった。また、斜長石はAn13-10Or5-7で、結晶構造から見積もられる平衡温度は約800度であった。斜長石のFe放射光XANESから得られた高いFe3+/Fe2+比は酸化的環境での形成を示唆し、カンラン石組成と合わせてLLコンドライトと類似する。また、斜長石は20ミクロン以上あり、カンラン石がほぼ均質化していることから岩石学タイプは5以上である。以上のことから、分析した塵はいずれも弱い衝撃を受けた平衡LLコンドライトである可能性を示しており、初期分析結果を再確認するに至った。