抄録
ミャンマーMogok変成帯の泥質片麻岩中に産するルチルは,黒雲母,石英と長石の集合体およびイルメナイト中に産するものに大別される.黒雲母と珪長質鉱物中に産するものは,Nb2O5 (~3.7 wt%) やZrO2 (~0.55 wt%)を固溶しており,Nb量は,Fe, CrやV量と正の相関を示す.一方,イルメナイト中のルチルは,Feに富む(~3.2 wt% as Fe2O3)が, 他の3価の元素 (M3+) やNbはほぼ検出限界以下である.NbはNb5+M3+Ti4+-2の置換によって,イルメナイト中のルチルのFe は空席を含むFe3+4Ti4+-3☐-1の置換によってルチル中に固溶していると考えられる.Zr量は母晶によって大きくことなる.珪長質鉱物中のものは4200 ppmに達し,多くの結晶が800℃以上の高温を示し,変成作用ピーク時の情報を保持していると考えられる.一方,黒雲母中の結晶のZr量は 多くが1000 ppm以下であり,降温変成期に,Tiに富む黒雲母から離溶して形成されたと考えられる.なお,イルメナイト中の結晶は 検出限界 (300 ppm) 以下である.