抄録
通常学級において学習に困難を抱えている子どもは,一定の割合存在すると考えられており,抑うつや攻撃性などのメンタルヘルスの問題を抱えていることが示唆されている。本研究では,書きの問題と抑うつ,攻撃性との関係を検討することを目的とした。対象児童は,通常学級に在籍している小学校2年生886名であった。対象児童には,抑うつと攻撃性の質問紙,ひらがなとカタカナ,漢字の書き取り調査を実施した。教師と保護者には,抑うつと攻撃性に関する質問紙を実施した。その結果,書字能力が低いほど抑うつや攻撃性の問題があることが示唆された。すなわち,書字能力の低い子どもはメンタルヘルスにおいて脆弱性を持つ可能性があるといえる。今後の書字学習支援では,個々の子どもの認知特性を把握した支援に加えて,抑うつや攻撃性といったメンタルヘルスにも配慮した支援がより求められるであろう。